左から吉田氏/増谷氏/吉永氏
2016 年4 月より「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)」が施行され、労働者301 人以上の企業は、女性の活躍推進に向けた行動計画の策定などが新たに義務づけられます。各社では、優秀な人材の確保と企業の競争力向上につなげるために、女性活躍推進に本格的に取り組んでいます。既に中核人材として活躍されている女性の経営アカデミーマスター(OG)にお集まりいただき、お話を伺いました。
取材日:2015年9月28日
経営アカデミー参加のきっかけ
吉永氏:入社以来、サプリメントの素材開発に携わり、
素材をサプリメントメーカーに卸すほか、自社の通信
販売サプリメント製品の開発も行っています。我が社
では経営アカデミーの参加は公募されているのですが、
先輩から経営アカデミーのお話をよく聞いていたので、
自分もぜひ参加して開発に不可欠なマーケティングに
ついて学びたいと自ら手を挙げました。素材の企画や
研究開発計画策定にあたり、顧客視点でより良いもの
をつくっていきたいという思いがありました。
吉永恵子氏 理研ビタミン株式会社
増谷氏、吉田氏:社員自らが参加希望を出せるなんて、とても良い会社ですね!
吉永氏:私も良い会社だと思います(笑)。1 年近く長期にわたり大変な研修ではありましたが、自ら手を挙げましたので、積極的に取り組めたと思います。期待以上に吸収できたことが多かったですし。グループ研究で他社にインタビューに行ったり、グループメンバーから今まさに行われているナマのお話が聞けたりして、時代の流れや自社に取り入れたいところなどがよく分かりました。
増谷氏:私は、設計開発、研究開発に十数年携わった後、品質保証部門に移って管理職になり、人材育成や部門管理の仕事をしていたときに、経営アカデミーOB の上司から、自分が参加してとても有益だったからと参加を勧められました。ダイバーシティ推進部署の仕事も兼務していますし、当時は娘がちょうど中学受験を控えていたこともあり、忙しくて当時の記憶がほとんど無いくらい大変ではありましたが、もっとステップアップしていかなければという意識を持ってアカデミーに参加しました。
吉田氏:私の場合、経営アカデミーの参加は小松市にある当社の研修教育部門から話がありました。お話を頂いたときはいつも「やる」方を選択してきていますので、参加に迷いはありませんでしたが、やはり大正解でした。学んだ知識が業務に結びつきやすかったため楽しめました。自社を客観的な視点で捉え、考えられるようになりたいと思っていましたが、新しい知識に触れ続け自分に刺激を与え続けることは重要だと思いましたね。
コマツは世界中に販売拠点・工場を持つモノづくりの会社なので、グローバルに活躍できる人材が必要な一方で、技能の熟練者も時間をかけて育成していく必要があるため、コース別人事制度を採用しています。私は入社以来ずっと人事で、大阪の工場の人事総務を4 年ほど担当した後、本社に移りました。増谷さんの会社のように、研究開発部門にいながら人事部門も兼任というのは大変良いことですね。例えば、採用において技術系(理系)の学生の気持ちがよく分かり、面接や学生への説明の仕方などが変わってくるかと思います。
増谷氏:私が管理職になったときは、まだ管理職の女性が
少なかったので、人事が、今後女性管理職を増やしていこ
うと現場の意見を吸い上げるために、兼務の体制をとった
のでしょう。会議に出たり、ダイバーシティのイベントに
参加したりしています。部門間の異動は、公募制により自
ら手を挙げて異動する場合と、現場の上司が本人のキャリ
アを考えての異動があります。
増谷真紀氏 株式会社ブリヂストン
年齢、役職など気にせず、自分を“ 開放”できる場
吉永氏:経営アカデミーでは業種も職種も年齢も違う人たちとあらゆるテーマで意見交換できるのが新鮮でした。様々なタイプの人が集まっているので、話のきっかけを出してくれる人、話をまとめる人、面白いアイデアを出す人など、グループ研究での役割分担も自然に出来ました。コースは月曜日の夜だったのですが、みなさん仕事終わりの慌ただしい中、アカデミーに駆けつけていました。通常ならば萎縮してしまうような立場の方ともざっくばらんにお話ができたことが楽しかったですね。研修終盤には、グループ研究指導講師であった明治大学の竹村正明先生の研究室に休日みんなで訪問し、討論した後一緒にご飯を食べて帰ったこともありました。私は普段、そんなにしゃべる方ではないと思っているのですが、アカデミーでは「よく喋りますねー」と言われました。きっとここでは、色々な垣根を超えて“ 開放” されるのかもしれません(笑)。
増谷氏:私も年齢も役職も気にせず、安心して話せる場だったと思います。アカデミーに参加してから、会議の時はホワイトボードの前に立つようになりました。聞いただけでは分かりづらいことも書くことで整理でき、勘違いもその場で正せます。
吉田氏:とにかく発言することが大事と改めて感じました。特にグループワークやディスカッションでは発言数がアウトプットに影響するので、ささいなことや的外れなことでもなるべく発言するように心がけていました。「会社の代表として参加・発言している」という自覚が自分を変えてくれたと思います。グループ研究ではお酒好きなメンバーが多かったので毎回飲みに行きましたが、そこで仕事のこともプライベートなこともいろいろ話せたからこそ、グループ研究中にも遠慮のないディスカッションができたと思います。
特に、人材マネジメントコースの参加者は人事系の方々
なので、他社の人事制度や施策に関する情報交換が盛んだ
と思います。今でも時々メールなどで、新制度を導入する
際に“ 皆さんの会社ではどう? ” と気軽に相談し合っていま
す。社内でダイバーシティの勉強会が立ち上がったときに、
私もメンバーにお願いして企業訪問をさせてもらいました。
LINE のやり取りも頻繁です。内容は主に飲み会の招集案内
ですが(笑)。
吉田奈央氏 株式会社小松製作所
女性活躍の土壌づくりが今後の課題
吉田氏:ダイバーシティ勉強会では、ブリヂストン様にも訪問してお話を伺いました。特にキャリア育成(CDP)に力を入れていらっしゃるそうですね。我が社でもキャリアを中断しないための施策から、キャリアを積み重ねるための施策にシフトしています。
増谷氏:女性活躍のための制度は整ってきましたので、活躍の土壌づくりが今後の課題です。部署の中に同じ年代の女性が複数いて、同じタイミングで育休を取る可能性もある。そのときにどうするか。女性だけでなく組織として働き方を変えていく必要があると思います。女性の採用を増やすとどの組織も抱える問題です。現場のマネジメントは大変で特に課長に負荷がかかります。
吉田氏:私はもうすぐ出産の予定なのですが、人事部門として、育児と仕事の両立を目指す社員の施策策定に役立つような経験ができればと思っています。個人的には、育休から復帰後、どのように1 日のスケジュールを回していけばいいのか思案中です。
増谷氏:その時々で自分が何を一番大事にしたいかを決めると良いと思います。私の場合は、娘が乳幼児の時は、子供の生活リズムをできるだけ崩さないことを優先しました。そのことにより、子供の体調が維持できて、結果的に会社の仲間にも迷惑をかけなくて済むからです。家事も優先順位を決め、時々業者に頼んでいます。女性だけで抱えこまずもっと外部の力に頼っていいと思います。罪悪感を持ちすぎないなど、気持ちの割り切りも重要です。アカデミー受講中は眠気と闘いながら課題図書を呼んだりしました。睡眠時間を削りながらも乗り越えられたのは、何かスイッチが入るのか外れるのか(笑)、子どもを持って強くなったからだと思います。主人は私の仕事を応援してくれており、仕事を続けるにあたって大きな力になっています。
吉永氏:我が社でも育児もしながらバリバリと働いている方が増えました。旦那様と予定をクラウドで共有するなど工夫している方もいます。女性管理職も増えてきました。今後、アカデミーのような選抜型長期研修への女性の派遣がますます増えることを期待しています。
吉田氏:時間とお金をかけて自分を研修に派遣してくれた会社に大変感謝しています。その分還元しようという気持ちに満ち溢れていますし、他の方にも可能な限りこのような学びの機会の提供をお願いしたいですね。
吉永 恵子(よしなが けいこ)氏
博士号取得後、2004 年入社以来、ヘルスケア事業部にて主にサプリメントの素材を開発。自社の素材を知ってもらうために、論文や学会発表も行っている。農学博士。健康食品管理士の資格も持つ。 |
増谷 真紀(ますたに まき)氏 1991年入社。タイヤ以外の商品の設計開発と研究開発に携わった後、品質保証部門に移り、管理職として人材育成や部門管理の仕事に従事。工場現場を経て現職。ダイバーシティ推進部門も兼務。 |
吉田 奈央(よしだ なお)氏
2007年入社。大阪の工場で人事総務にて就業管理や教育などに従事後本社に移り、人事・賃金制度の企画、労使協議開催の事務局を担当。2016 年1月に第1子を出産予定。 |
※所属・役職は2015年9月28日時点